What does an Editor do?
「お仕事は?」
「編集者をしています」
「そうなんですね」
きっと、編集者(ならびにその経験がある人)であれば、誰もが一度はこのキャッチボールの後に話題転換を強いられたことがあるに違いない。
編集者は肩書きこそそれなりに名が知られていながらも、その業務内容は多岐に渡り、説明しても尚、理解されない職種のように思える。
物書きになることもあれば、アイデアマンになることもあり、プロジェクトの予算管理を任されることもあれば、デザイン業務を請け負うことだって。
実を言うと、編集者を名乗る自分でさえも「エディターって何だろう?」と、疑問を抱いたことがある。
そんな時にひとつの答えを見出してくれたのが、英文学者/評論家である外山滋比古氏の著書『エディターシップ(2002)』だった。
『思考の整理学(1983)』でも知られる外山氏の同著では、“エディター(編集者)として考える姿勢”を「エディターシップ」と表現しており、読むことと書くことを繋ぐ“第三の知的行為”を「編集」と考えている。
同著によれば、編集者は七つ道具のように、様々な武器を携えている。
例えば、「切り取り/組み換え」のスキル。
情報は塊のままでは重すぎるため、まずは小さく切ることから始まっている。
そして、これと対になる道具が「捨てる勇気」だ。
外山氏は、編集力は「足す技術」ではなく「削る決断」で磨かれるとしており、編集者は大きな情報を切り取り、不要な部分を削って、また別の塊から切り取った一部の情報と繋ぎ合わせるような作業を日常的に行なっている。
こうした幾重にも重なる情報を連続的に切断・結合することにより、文字を書けば記事となり、制作ではブランドやクリエイターの想いやイマジネーションを紡ぎ合わせているのだ。
『エディターシップ』では、執筆された時代が故に、現代技術への言及は少ない。
だが、編集者を現代技術に置き換えるのであれば、ハードウェアやアプリケーションを正常に作動させる「OS」のような存在と言えるのかもしれない。
スマホやPCを開き、Googleで検索をかければ欲しい情報が見つかり、Photoshopを開けば画像を思いの儘に加工でき、目覚ましをセットすれば毎日7時にアラームが鳴る。
OSはiPhoneやMacbookでもなければ、Photoshopでも、ChatGPTでもないが、それでもデバイスやアプリケーションを正常に操作するために必要不可欠なシステムだ。
この著書を読了しても「編集者」を端的に説明するのは難しい。
ただ、個人の見解として「編集者」とは「情報を切り、組み、削り、余白を与えて、読む人の思考を起動させる“代理読者”」という結論に辿り着いた。